JRP札幌支部

写真をもう一度 5

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 僕は高校に入学して初めて暗室作業を学びました。
校庭の片隅に掘っ建て小屋があり、「写真部」と木片に墨で書かれた大げさな看板が揚げられていました。
部室の半分が暗室でした。
部員は三年生の先輩が一人っきりでした。
大変穏やかな紳士という印象が強かったと記憶をしています。
一年生の目から三年生は大人でした。
ましてや僕は中三で青森から東京に出されていましたからなおさらそう見えたのかもしれません。
二年生はいませんでした。

 その三年生は数人の僕ら一年生に暗室の使用方法を説明し「何かあったら呼んでっ」と言って、それ以来、顔を出すことはありませんでした。
後で分かったのは、彼は受験勉強が忙しかったのです。

 幸い、同じ一年生にM君という暗室に詳しいのが一人いて、彼が他の一年生の先生役をしてくれました。
暗室は一年生の天下でした。
大きな顔をした一年生は毎放課後部室に集まり「写真とは」とか「写真は芸術たりうるか」などという議論を繰り返していました。

 部室を出るのは空腹に耐えられなくなった時間でした。
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by jrps | 2012-11-08 12:30